言語におけるジェンダー・イデオロギー 阿部圭子
一、ジェンダーとは
言語学:男性名詞と女性名詞を区別する文法用語
生物学:生物学的性差
社会的:ジェンダー・アイデンティティは自分で構築していくものである(構築主義)
二、言語の性差研究
<欧米における>
1.言語のフェミニズム運動
R. Lakoff「女性の言語が劣るもの」
⇔フェミニストたちが反対し、全ての言語差別をなくす運動を展開
D. Spender「男が男の視点から言語を作り出し、女性を意味の創造から排除」
⇔Cameron「言語の制度的側面に注目すべきである」
2.社会言語学の分野における性差研究
◆階級と性差による言語変異
Trudgillのノーリッジ調査:
①「社会成層化」
② 社会階層+性差
→「過剰矯正」:中流下層の女性はが極端に改まった言葉を使う
◆社会関係網
同一の言語共同体における、人々のつながりや関係性
L.Milroy 「社会関係網と土地言語使用の相関関係が強い」
◆談話における男女の性差
「支配説」
R. Lakoffら「男性優位の社会構造が会話の中にも反映する」
⇔性別より社会的地位と関係が深い
「相違説」
Daniel N. Maltz ら
「男女の話し方の違いはそれぞれが属する集団の違いから生まれた」
◆指標性
指示的 →明示的な内容を持つことや、外延的な意味に関わるもの
非指示的 →暗黙の社会的・文化的な前提を土台に、
性差や敬意などの社会的関係や対人関係を示すもの
3.民族誌学的言語における性差研究
人類学や文化人類学における多くのデータから言語の男女差が見られる。
<日本における>
~戦前~
国語学 →書簡文の平仮名文字の使用を女文字として区分けする
位相語 →特定の社会集団・専門分野に特有な、または特長な表現語彙
~戦後~
◆欧米の社会言語学が導入
◆欧米の考えで捉えきれない「女文化」
井出ら 女性が男性より丁寧な言語表現を使用するのは役割の差である。
相手を高めると同時に自分自身の地位と品位を示す
⇔女性の言語が劣るものであるという欧米の考え方を否定
※中国語では
我 你 他→我 妳 她
利→莉
Chris→克里斯(男性)
柯莉絲(女性)